運動と脳の関係⑩
運動と脳の関係について、
シリーズでお届けしています。
では、どうすれば40人の生徒一人一人が
ベストを尽くしたかどうかをいっぺんに
評価することができるだろう。
ローラーはその答えを、毎年春に自分が開催している
体育会議の会場で見つけた。
彼はその会議が新しいアイデアや技術の交換の場に
なることを願い、教師たちの参加を促すために
学校向けのプレゼントの抽選を企画し、
その商品を業者に寄付してもらっていた。
毎年会議の初めには、大型のカートを押して
会場の通路を進みながら、バットやボール、
その他のスポーツ用品を集めた。
ある年、寄付してもらった商品の中に、当時
数百ドルもした新型の心拍計を見つけた。
ローラーは自分を抑えることができず、「革命」の
ためにその心拍計を失敬した。
「それが、すごいものだとわかったんです」
と、かれは屈託なく認める。
「これは、マディソン中学が当てたってことにしよう!」
早速その週、生徒たちが走るときに、体形はスマートでも
運動が苦手な6年生の女子にその心拍計をつけさせてみた。
そしてその記録をダウンロードしたローラーは、
わが目を疑った。
「彼女の平均心拍数は187だったんです」
11歳ということは、最大心拍数はおよそ209なので、
彼女はほぼ全速力で走っていたことになる。
「ゴールした瞬間は207まで上がっていました」
と、ローラーは続ける。
「おいおい、ウソだろう? 思わずそう言っていました。
いつもならその子のところに行って、もっと真剣に
走らなきゃだめだ、と注意していたところです。
まさにその時、計画全体に劇的な変化が起きたのです。
その心拍計がすべての出発点となりました。
思い起こせば、教師がほめてやらなかったせいで、
どれほど多くの生徒が運動嫌いになってしまったことでしょう。
実際のところ、
体育の授業であの子は誰よりも頑張っていたのです」
ローラーは、速く走れることと、ベストを尽くしていることは
必ずしもイコールではないということに気づいたのだった。
次回に続きます。
ジョン.J.レイティ著
「脳を鍛えるには運動しかない」
~最新科学でわかった脳細胞の増やし方~ より
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