運動と脳の関係㉑
運動と脳の関係について、
シリーズでお届けしています。
ネーパーヴィルの生徒の中でも、ジェシー・ウォルフラムほど
運動に人を変える力があることを体現している人はいないだろう。
彼女は「オタク」を自認し、セントラル高校ではオールAだった。
エンブリー・リドル航空大学に入学し、現在物理工学を専攻している。
双子に生まれた彼女は、幼い頃から双子どうしのつながりに
頼りがちで、他の子どもと関わろうとせず、ずっと内気だった。
「小学校3年の時に、母からピアノかサッカーのどちらかをしなさいと
言われたんです」
ジェシーは笑いながら振り返る。
「うまくできそうにないサッカーを大勢の女の子と一緒にするって
考えたらとても怖くて、好きでもないのにピアノを選びました。
それで、8年も弾いていたんですよ」
マディソン中学に入学した時、当然ながらフィル・ローラーが
ピアノを選択肢に入れるはずもなく、ジェシーは他の生徒と
同じように体育に参加しなければならなかった。
運動はあまり好きではなかったが、それほど大変でもなく、
体育の授業がトラウマになるようなことはなかった。
彼女は体育を通じて自分の体について学び、
それがあとあとまで役立つことになる。
双子の姉妹ベッキーも、ともにセントラル高校に進んだが、
時間割が違っていたので、互いをいつも頼るわけにはいかず、
ジェシーは無理をして他の生徒と話すようになった。
人付き合いの不安を克服しようと、
スピーチの授業を選択したりもしたが、本人が言うには
本当に成長させてくれたのは、カヤックの授業だった。
ジェシーは高度なテクニックを必要とするこのスポーツを
たちまち好きになった。
勉強以外に得意なものを見つけたことは、
自分を変えるきっかけになった。
「他の人にできないことができると、皆に注目されます」
とジェシーは言う。
「カヤックで注目の的となってからは、もう誰にも気づいてもらえない
地味な女の子ではなくなりました。それで、前より冒険ができる
ようになりました。
それに、あなたが内気だったとしても、仲間が同じように
シャイだったらどうしますか?
自分が内気だということを忘れて、説明するしかないでしょう。
頭をこっちに向けて、とか、櫂(パドル)はこんなふうに
動かすのよって」
プールも、別の意味で平等をもたらした。
「水着に着替えてしまったら、誰が人気のあるグループにいるか、
なんてわからなくなります。
体育の授業は、そんな社会的ポジションの境界をすっかり消して
くれました。カヤックを始めるまで、私はそういうことに
とても悩んでいたんです」
次回に続きます。
ジョン.J.レイティ著
「脳を鍛えるには運動しかない」
~最新科学でわかった脳細胞の増やし方~ より
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