運動と脳の関係⑬
運動と脳の関係について、
シリーズでお届けしています。
そして、その大規模な実験の成果は学習だけでなく
より幅広い領域に及ぶだろうし、中高生に限らず
大人にも適用できるはずだと考えた。
ネーパーヴィルでのケーススタディは、
有酸素運動が、体だけでなく
心も変化させることをはっきりと示していた。
さらには社会を作り直すためのすばらしいひな型を
図らずも教えてくれていた。
そういうわけで、私ははるばるイリノイまで赴き、
ネーパーヴィルのホリデイ・インの前庭で
ローラーとジェンタルスキとが語り合い、
体育教師の口から出るとは思いもしていなかった言葉を
聞かされたのだった。
「私たちの授業では、脳細胞を作りだしています」
とジェンタルスキは言った。
「それが育つかどうかは他の教師の腕次第です」
ローラーのやり方は、アメリカの公立学校の最近の
傾向に逆行するものだった。
現在、多くの学校では2002年に国が制定した
「落ちこぼれを作らないための初等、中等教育法」
に準じるテキストに生徒を合格させようとして、
数学や理科や英語の時間を費やし、体育の授業を減らしている。
高校で毎日体育の授業があるのは、全体の6%にすぎない。
それに加えて、
子どもたちは1日平均5,5時間をなんらかの画面
ーテレビやコンピュータ、あるいは携帯ゲーム機ー
を見て過ごしている。
こうしてみると、アメリカの子どもたちが
以前に比べて活動的でなくなったのは当然といえるだろう。
だからこそ、私はネーパーヴィルで起きていることに
強く励まされた。
最初にその学区を訪れたのは、もうすぐ夏休みに
入ろうとしている時だったが、マディソン中学校の
体育の授業をみると、とてもそうとは思えなかった。
30人程の生徒が新たな学年が始まったかのような
活気をみなぎらせて走りまわっていたのだ。
クライミングウォールに登るために並んだり、
ビデオゲームのディスプレイとつないだ、新しい
エアロバイクを誰が最初に使うかでもめていたり、
ランニングマシンでがむしゃらに走っていたり、
熱中したりしていた。
全員が心拍計をつけ、そして最も重要なことだが、
全員が夢中になっていた。
次回に続きます。
ジョン.J.レイティ著
「脳を鍛えるには運動しかない」
~最新科学でわかった脳細胞の増やし方~ より
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